演技力の鬼たちによる狂作集合体 彗星マジック 27景 短篇集 「アソートメント・アパートメント」感想
皆さん、演劇観ておりますでしょうか。
私はまだまだ観劇凡人（かんげきぼんんちゅ）を始めて数年のペーペーですが、それでも様々な観劇体験をしてまいりました。
【ここが嫌だよ！小劇場あるある】
・制作陣営と古参ファンの間を流れる生暖かい空気
これめちゃくちゃあるある。「エヘヘ…皆さま、ヘヘッ、いつものことですが〜」「フフッ…（照笑）」
大体パターンは同じです。ちょっと人見知りを隠しきれない演劇人たちによる知らない定番ギャグによる前説…アンケート、感想の強要…ここでしか買えないダサいオリジナルグッズたち…大人が缶バッチ使うタイミングってある？？
全てはその空間を楽しむことが出来ない観劇ひねくれ人の私のせいに尽きるのですが、上げ出したら苦痛ばかりの観劇ライフを日々送る理由はただ一つ。
たまに人生観全部変えられるくらいめちゃくちゃ面白い話がある。
それに尽きます。
演劇って本当に本当に苦痛な作品、演出家オナニー、これは君に届け？君の名は？、そんなチープな群像劇、ダサい衣装、軋む平台から飛び降りてバタバタ殺陣を披露する化粧が濃い男達…そんな幾許ものSASUKEを乗り越えた先にあるfinalstage。
意味の分からなかったはずのセリフの羅列が徐々に繋がっていき次第に客は息を呑み観劇人見知り人はどんどん猫背になっていき、暗転の間に慌てて呼吸をする。脳汁が止まらなくなり興奮は最高潮なのに声を出すことは許されない空間。港区女子に今日からデビューした23歳商社女もビックリ、最高にクレイジーな空間はそこにあります。
今回は先日行われたそんなビックリクレイジー体験の一つの感想を言うだけのブログです。
個人の感想ですので大変主観が多いですがご容赦ください。
彗星マジック 27景 短篇集 「アソートメント・アパートメント」
関西を拠点に活動する劇団「彗星マジック」による短編４本で構成された公演。
詳しくはググってください。あなたのHPのリーチが劇団のために！関西小劇場のために！演劇界に、日本の芸術を守り続けていくことにつながります。私は港区女子のためにこの狂った空間を守りたい。
主催の勝山さんがビジュアル面も大変得意としているので毎回デザインなども凝っていて本当におしゃれ。見習うべき劇団は星の数ほどあると思います。あなた達です。
公式サイト▼
前説は主催の勝山さん。
エアコン暑いですか。寒いですか。丁度いいですか。みたいなクソどうでもいい茶番がありつつ公演はスタート。小劇場あるあるパイプ椅子、クッションが引いてあって腰が痛くならない。助かる。
サーキュラー・ヴェロシティ・アパートメント
作：勝山修平
演出：池山ユラリ
出演：小沼桂大、益田杏花、森下愛梨、米山真理
やがて宇宙から飛来する最恐の壊滅災害に備え、世界最強の人間は今日も宇宙空間に浮かぶ小規模な低軌道コロニー、通称"アパート"で警戒疲れを感じながら、住人たちとそれなりに交流しつつ概ね大いに退屈な日常を過ごしていた。
"アパート"での日常は時間感覚を狂わせる。
何せ1日に地球を約16周、朝と昼を16回も繰り返すのだ。
夜が来ても未だ今日。朝が来ても未だ今日。
明日はまだか。壊滅災害はいつ来る。
勘弁してくれ。
一本目はこちらでスタート。
「捻じれろ…」が口癖の目がバキバキの女がなんか擬似ブラックホールを作成できるとかいうとんだチートな能力を持っていて地球を救ってくれるんだけどめっちゃ暇過ぎて好きな男の子錬成しちゃってあら大変。そんな一昔前の新海誠かのような設定のお話。秒速5センチメートル？
衣装が100分の1に削減されたパプリカのmv？ってくらい終わってるんですけどなぁぜなぁぜ？
劇団員増え過ぎやろと思ったんですけど全員ちゃんと上手くて感動しました。
唯一男性ビックリハーレム小沼桂大さんはまだ未熟ですがここからの伸び代にめちゃくちゃ期待出来る役者になると思いました。横顔松村北斗？
正直30分という短い時間では設定を活かしきれなかった印象はありますが、オタク特有の早口でモノマネしたくなるシーンは沢山あり、帰り道そこら中で「捻じれろ…」と微笑みながら歩いてましたのでそういう意味では記憶にきちんと残った作品。やってることはほぼ特撮です。
テレグラキ
作・演出：勝山修平
出演：ダブルキャスト
【A】小沼桂大、益田杏花
【B】池山ユラリ、森下愛梨「そちらは、お元気でしょうか。この電信は届いていますでしょうか。もし届いているのであれば、返信を、どうか、どうか。待っています。」
ロシア連邦チェリャビンスク州に隕石が落下した2013年2月15日を境に分断した【もうひとつの現代】を舞台に、大容量の電波を使った通信ができない世界で、静かにずうっとモールスを、閉め切った部屋の中で縋るように、宇宙へ向かって流し続けるひとと、応えただれかの物語。
続いてこちらの作品。
正直この作品が再演されると聞いて今回観劇を決めました。
私が観劇したのは【B】の回。昔観劇した際の米山真理、有元はるか（カヨコの大発明）の二人の熱演が強烈過ぎて正直期待値下げていたんですが、流石です。ありがとう彗星マジック。
上手と下手にそれぞれ並んだ二人。そのうちの一人にスポットが当たるとめちゃくちゃ喋り出します。出ました、貴方は一本目の「捻じれろ…」で私を虜にした森下愛梨…！
「・ー・、・ー・、・・・、ーーー」（フィーリング）
？？？？？？？？？？
おどおどした女がいきなりずっとトンツートンツー言い出してなんだこれはと思ううちになんか上手いこと設定が説明されてこの女が壊滅都市で一人モールスを発信し続ける継続する努力の出来る偉メンヘラ女であることがわかります。
なんでそれ覚えれるん？正直適当に喋ってみたりしてるんじゃないの？みたいな情報量のトンツーを繰り返してたらなんとついに偉メンヘラ女の努力が報われる時が。
なんと通信が繋がるのです。相手の名前はエクソソフィア。遊戯王？
このシーンはほぼがっこうぐらし！６巻の胸熱展開と同じです。
https://www.amazon.co.jp/がっこうぐらし！-まんがタイムKRコミックス-フォワードシリーズ-原作：海法-紀光（ニトロプラス）/dp/4832246038
エクソソフィアを演じるのは池山ユラリ。コイツがまたハチャメチャに良い。
顔立ちがスッとしてるから人間離れしてて少し高めの声もまたマッチしてマジでエクソソフィア界の中で一番エクソソフィアが似合うエクソソフィア王。
「私には人間の感情は複雑過ぎて難しい」とか偉メンヘラが調子乗ってちょっと距離感詰めるために「特別な意味でのさようなら❤︎」みたいなモールス使ったら「普通の意味でのさようなら」的なモールス送り返してきて偉メンヘラ女は友達できないタイプの拗らせコミュ障なので「え、友達だったっけ私たち？」みたいなこと言われて共感性羞恥で居た堪れなくなって「メンゴやっぱ取り消して普通の意味でのさようなら…」とか言って、死にたくなってます。
それに対してエクソソフィアは「ラージャー」とかいうからマジで人の心無い。経理部？
毎日モールスを繰り返すうちに徐々に仲良くなる二人の圧倒的音ハメ鬼暗記力モールス祭かっこ閉じるはマジで気持ち良すぎて呼吸を忘れるので全員見てください。トンツートンツー。
後半ピノキオ歌い出すところとかは正直ベリー有名ソング過ぎて若干オモロ空間にもなるのですが、流れ星のくだりの偉メンヘラ女だけ大喜びしてるけど地球的にはマジでカス展開なのは最高最高最高の気持ちになれます。
後半の森下愛梨演じる発達障害だから人との距離感わからん過ぎてこの世の全てに絶望してグシャグシャに追い詰められるシーンは本人なん？ってくらい演技力バグってます。
お願いだから今後彗星マジックは森下愛梨に「めちゃくちゃぶりっ子で男から爆モテしていると思いきや実は誰からも嫌われていた愚か女」「めちゃくちゃ良人の裏で善悪の区別がつかないまま人殺しをしまくるサイコ」めちゃコミの売れ筋漫画の設定をこれでもかというほど盛り込んだ役をやらせてあげてください。
テレグラキ、サイコ〜♪
月とマシンガン
作：池山ユラリ
演出：勝山修平
出演：池山ユラリ、益田杏花、米山真理
地球に「宇宙人」が降り立ち数年、「地球人」と「宇宙人」は緩やかに交流を続けていた。
しかし、「宇宙人」は目の前にいる存在の心が読めることが判明。
心を読まれることによって「宇宙人」からの侵略を恐れた「地球人」は、「天の川政策」を施行し、地球上の何人たりとも国に申請しないと顔をつき合わせてコミュニケーションを取ることができなくなってしまった。
とある満月の日。
申請していない神聖な友人が、私の目の前にいた。
３本目は少女漫画版銀魂みたいな話です。
誰が地球人で誰が宇宙人だ〜？みたいな話なんですがアホアホの私でも最初の会話聞くだけで
す〜ぐわかります。マシンガン、炭酸せんべい、モテる女、不倫、かぐや姫、アソート的モリンモリンの設定が活かしきれていないのがちょっと残念。でも銀魂だと思えば良い回です。
池山ユラリが輝くのもまたこちら。
この女ついさっきまで瞬きゼロロボット女をやっていたとは思えないほどナチュラルぶりっ子あざと吉岡里帆に変身します。いっちばん女に嫌われます。
めちゃくちゃ男にモテるから女子から反感買うんだけど別に悪い子でもないしとつるんでいると何故かわからないけどめちゃくちゃウザい、そんなことを考える私だからモテないんだろうか…と自己嫌悪に陥る、あの青春の日々を追体験することが出来る稀有な女優であることがよくわかる作品でした。
益田杏花はこの作品の方が私的には好み。めちゃくちゃ普通の人間をこんな普通に演じることが出来るでしょうか。クセのない演技が出来るって逆にめちゃくちゃレア度高い。
あとビジュアルが良い。細身で丸顔で目が大きくて、一目で覚えれる。こんなに美人なのに好奇心でTwitter見たらカブトムシ飼っててなんで？ってなった。
ラメント
作・演出：勝山修平
出演：小沼桂大、森下愛梨、米山真理
その年の夏は、酷暑が続いたり、台風が逸れたり、政府が節電を呼びかけたり、悲報のニュースが目立って流れたり、つまりはいつもの夏でした。
けれども誰かにとっては、私にとっては、格別で、特別な、出会いと別れの夏でした。
きっともう逢うことはないけれど、私は元気でやってるよ。
記憶喪失の子供と、家族を殺害した容疑で指名手配されている女性と、 宇宙人を自称する男性がともに過ごした、歪で愚かで愛おしい、ひと夏の記録。
ラストはこちら。
みんな待ってた米山真理主演作品。
米山真理の泣きの演技、怒り…悲しみ…絶望…これらからしか得られない養分があります。
関西小劇場界の安藤サクラ。この作品は日本橋界の安藤サクラvs松村北斗の頂上決戦です。
家族殺しの罪で逃げ回っている女に宇宙人と記憶喪失の幼女がついて回ってくる朝ドラの情報量？ってくらいのトンデモ盛り込み設定を30分でまとめたこちら。
小沼桂大が終始めちゃくちゃキショくて（褒め）な〜にがステップ♪だ。お前正面から見たらめちゃくちゃ目デカいなとか様々なブレンド出汁を出し過ぎているのと森下愛梨が父親から犯されるシーンの惨たらしさが本物のそれ。また森下愛梨が本物やってます。
正直もっと良い解決方法あるだろとか人間拾うなとか結局お前宇宙人なんかとかツッコミどころ満載なんですけど、演技力で黙らせました。というかこの作品に関しては人間のやるせなさとか込み込みでこれで良いんだろうな〜と思います。
最後に
色々書きましたが今後も応援し続ける劇団ランキングNo.1であること間違いなし。ラヴィットで川島さんも言ってました。＃小田は彗星マジック でトレンド入りする未来があります。
初めましての劇団員さんの今後が楽しみすぎました。今度は長尺の演目がみたいな〜と期待。
